記事更新日:2026年08月03日
記事公開日:2025年03月25日
ビジネスモデルのスライドは、事業の全体像を1枚で説明する資料の要です。ただ「図解する」といっても、自社を中央に置くのか、左から右へ流すのか、循環で見せるのかで、伝わる内容はまったく変わります。
この記事では、実際に公開されているIR資料・会社紹介資料の中から、ビジネスモデルのデザインが優れているスライドを12枚選び、4つの構造型に分けて紹介します。自分が説明したい事業がどの型に当てはまるかを先に決めてから読み進めると、そのまま作図の下敷きになります。
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今回集めた12枚を並べてみると、ビジネスモデルの図はおおよそ4つの構造に整理できました。どれが優れているという話ではなく、説明したい事業の性質によって向き不向きがあるという関係です。
| 型 | 得意なこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 中央ハブ型 | 自社の立ち位置と、誰から誰へ何が流れるかを示す | プラットフォーム・マッチング事業。「間に立って何をしている会社か」を初対面に説明する場面 |
| 左→右フロー型 | 工程の順序と、そのうち自社が担う範囲を示す | 卸・製造・仲介など、モノやサービスが順に受け渡される事業 |
| 循環・サイクル型 | 成長が自己強化的に回る構造を示す | SaaS・クチコミ・データ活用など、使われるほど強くなる事業 |
| 数式・因数分解型 | 売上がどの変数で決まるかを示す | IR・投資家向け。「どこを伸ばすと業績が伸びるか」を説明する場面 |
自分の事業がどれに当てはまるか決めてから、その型のセクションを読んでみてください。
自社を図の中央に置き、左右にプレイヤーを配置して矢印でつなぐ型です。「誰と誰の間に立つ会社なのか」がレイアウトそのもので伝わるため、プラットフォーム事業やマッチング事業と相性が良い型です。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20260331/140120260331594044.pdf
GMOメディアのビジネスモデルスライドです。中央ハブ型の教科書と言っていい一枚で、まずこの形を押さえておけば応用が利きます。
中央に白い正円でコエテコを置き、左にスクール、右にユーザーを縦長のボックスで配置しています。両者と中央を結ぶ矢印は5本ありますが、すべてに①〜⑤の番号が振られているため、どこから読めばいいか迷いません。そして⑤の「成果報酬」だけが濃紺で、他の4本は明るい水色。お金の矢印が1本だけ色を変えて置かれているので、どこで収益が発生する会社なのかが図から直接読み取れます。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20260331/140120260331594348.pdf
スペースマーケットのビジネスモデルスライドです。同じ中央ハブ型ですが、こちらは収益条件まで図に載せきっているのが違いです。
ホストとゲストのボックスには、それぞれ「自分の持つ空きスペースを有効活用したい!」「パーティや会議、撮影に使う場所を借りたい!」という一言が添えられています。登場人物が何を求めて来るのかまで書いてあるので、図だけで需要と供給の関係が理解できます。さらに図の下へ点線を引き出して、手数料率30%と5%を大きな数字で置き、最下段には「利用料が10,000円の場合」の具体的な取り分まで1行で示しています。緑と白の2色だけ、線もすべて細線で統一されており、情報量のわりに静かな仕上がりです。

引用元:https://speakerdeck.com/coneinc/cone-inc-hui-she-shao-jie-zi-liao-cai-yong-pitutizi-liao
CONEのビジネスモデルスライドです。中央ハブ型をどこまで削れるかの答えのような一枚で、要素は円が3つと矢印が4本だけです。
左にBPOサービス運営企業、中央にb-pos、右にサービス比較検討層。3つとも同じ大きさの正円ですが、中央だけが青のベタ塗りで、他の2つは白抜きです。形を変えずに塗りだけを反転させることで、主役が誰かを示しています。矢印も2種類に整理されていて、直接のやり取り(資料を掲載/資料をDL)は円の間の短い矢印、間接的な価値提供(リード情報を提供/サービス検討の判断材料を提供)は図の外側を大きく回る細いグレーの矢印になっています。青と白の2色、余白は全体の半分以上。ここまで引き算しても説明が成立することを教えてくれます。
モノやサービスが順に受け渡される事業では、左から右へ一直線に並べる型が向いています。並び順そのものが説明になるため、余計な線を引かずに済みます。

引用元:https://www.slideshare.net/enlead39/ss-b5e1
エンリードのビジネスモデルスライドです。フロー型の基本形として、まずこの構成を覚えておくと応用が利きます。
消費者→不動産仲介会社→当社→不動産仲介会社→消費者と、5つのボックスが等間隔で横に並んでいるだけの構成です。両端が同じ「消費者」で、買取から販売までが一周して戻ってくる形になっています。当社のボックスだけが濃紺のベタ塗りで、残り4つは薄いグレー。さらにボックスの下に別の帯として「中古物件の売却依頼」「買取 / 企画 / 施工」「リノベーション物件の販売」という工程名が置かれており、当社の下の帯だけが青枠になっています。「誰が」の行と「何をするか」の行を分けて2段にしたことで、1つのボックスに文字を詰め込まずに済んでいます。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20250331/140120250330503910.pdf
ジグザグのビジネスモデルスライドです。基本形に対して、流れの種類をアイコンで描き分けた応用例になります。
左にカスタマー、中央にzig-zag、右にECショップという3列構成で、矢印は上下に6本走っています。この6本を読み分けさせているのがアイコンです。お金の矢印(購入手数料・配送手数料/月額利用料)にはコイン束の円形アイコンが載り、モノの矢印には飛行機とトラックのアイコンが置かれています。線の色を増やさずに、アイコンだけで流れの種類を分けているわけです。中央のボックスにはカスタマーサポート・購入代行・検品/再梱包という自社の提供機能が3つ縦に並び、間に立つ会社が何をしているのかまで説明しています。色は金茶色ほぼ1色、アイコンはすべて同じ太さの線画で揃えられており、要素が多いわりに散らかった印象がありません。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20250616/140120250616590376.pdf
フーディソンのビジネスモデルスライドです。フロー図と収益構造を1枚に同居させた欲張りな構成ですが、破綻していません。
左に「産地/卸売市場」、右に「飲食店」を赤い太い円で置き、中央に魚ポチサイトの実画面とフルフィルメントセンターの実写真を配置しています。矢印は赤=物流、黒=情報流の2色で描き分けられ、左上にきちんと凡例が置かれています。線が上下に交差しても読み手が取り違えません。そして右側にグレーの囲みで「収益構造」を独立させ、商品価格を縦のバーで表して、仕入値の上に乗る赤いブロックを「粗利=当社の利益」として示しています。フロー図だけなら「どこを通るか」しか分かりませんが、隣に粗利のバーがあることで「どこで儲かるか」まで1枚で完結します。
使われるほど強くなる事業では、循環図が説得力を持ちます。ただし円を描いて矢印でつなぐだけでは「そうなるはず」という願望の絵にもなりかねません。ここで紹介する3枚は、いずれも循環に何かを足して説得力を作っています。

引用元:https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/dv5d7w/
オープンワークのビジネスモデルスライドです。4要素を時計回りに回す、循環型のもっとも基本的な構成です。
ユーザーの増加→登録履歴書の増加→利用企業数の増加→求人数の拡大、という4つの白い円を太い青の矢印がぐるりとつないでいます。この図が願望の絵で終わっていないのは、各段階の外側に実数とYoYが置かれているからです。登録ユーザー520万人(YoY +16.0%)、Web履歴書登録者数70万人(+61.1%)、契約社数2,130社(+27.7%)、求人数4.8万件(+1,000.2%)。しかも数字は桁の部分だけを大きくし、単位や%は小さく組んであるので、4か所を見比べても目が疲れません。円と円の間にはグレーの小さい文字で「クチコミを見るため/転職活動をするため登録履歴書が増加」といった因果の説明が添えられており、矢印1本では伝わらない「なぜ次に進むのか」を補っています。

引用元:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4397/ir_material_for_fiscal_ym/164908/00.pdf
チームスピリットのビジネスモデルスライドです。オープンワークが循環の内側に数字を置いたのに対して、こちらは循環の結果を隣に並べるという解き方をしています。
左のカードが「シングルソース・マルチテナント」の循環図で、お客様のフィードバック→標準製品の機能を強化→多くのお客様が利用→無償バージョンアップの4要素を青い太いカーブ矢印が回っています。中心には製品画面のサムネイルが置かれており、何が回っているのかが具体物として見えます。右のカードは「サブスクリプション・ビジネス」の階段グラフで、1年目から6年目まで、濃い青の新規契約の上に薄い青の既存契約からのリカーリングレベニューが積み上がっていきます。左右を並べたことで、「回る仕組み」と「その結果として何が積み上がるか」が同じ1枚に収まっています。全体を水色系1色でまとめ、2枚のカードを同じ形・同じ大きさにしているため、対の関係も一目で読み取れます。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20250625/140120250625599418.pdf
エクサウィザーズのビジネスモデルスライドです。循環が1つでは足りない事業をどう描くかの答えで、円環を2つ並べて8の字に連結しています。
左がAIプラットフォーム事業、右がAIプロダクト事業。それぞれの円環の周囲に、個社の課題・産業毎のユースケース・AIアルゴリズム・各産業のデータ(左)、汎用課題への昇華・汎用課題を解決するサービス・幅広い顧客への拡大/展開・低コストストラクチャー(右)という要素が白い小円で配置されています。特徴的なのは円環そのものが濃紺の矢羽根の連なりで描かれている点で、別途矢印を足さなくても回転方向が伝わります。2つの円の中央には薄紫の円でexaBaseが置かれ、上下を「汎用的な課題への昇華」「個社課題の解決策の拡張」という薄紫の曲線矢印がつないでいます。本体の円環は濃紺、橋渡しの矢印は薄紫と色の濃さを分けているため、主役の循環と連結部分が混ざりません。
図を描く前に、そもそも売上が何で決まるのかを式にしてしまう型です。IR資料や投資家向け説明で多く見られ、「どこを伸ばすと業績が伸びるか」を説明する場面に向いています。作図に迷ったときの逃げ道としても有効です。

ポートのビジネスモデルスライドです。因数分解型の最小構成で、この形を出発点にすると迷いません。
上段は「売上高 = 成約社数 × ARPU」の一行だけ。使っている色は黒とグレーだけですが、結果である売上高だけが真っ黒、要素の2つは濃いグレーという濃度差がついています。色を足さずに、何が結果で何が原因かを分けているわけです。下段には「重要項目」として集客力・成約力・営業力の3列を置き、それぞれに具体的な打ち手を2つずつ箇条書きにしています。式で分解したまま終わらせず、「そのために何をするか」まで1枚に収めた構成です。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20250331/140120250331505439.pdf
カウリスのビジネスモデルスライドです。ポートの構成に対して、分解をもう1段深くした形になります。
「売上高 = 契約社数 × ARPU」まではポートと同じですが、そこからARPUだけを右へ引き出して、口座数 × ユーザアクション数 × モニタリング対象範囲という3つにさらに割っています。伸ばしたい変数だけを深掘りする作りなので、施策とどの数字が結びつくのかが具体的になります。そして下段には、まったく同じ形で「売上高 = 契約社数 × 平均価格50万円〜」というコンサルティング売上の式が置かれています。2種類の収益を同じ式の形で上下に並べているため、違いが中身だけに絞られて比較が速くなります。えんじ色と白の2色で、定義が必要な用語には※を振って脚注へ逃がしており、図の中の文字が増えていません。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20251219/140120251217521036.pdf
マクアケのビジネスモデルスライドです。ここまでの2枚が一方向に分解していたのに対して、こちらはKGIを中心に左右対称へ分解しています。個人的に、一本取られたと感じた一枚です。
中央に黄色の大ブロックで「KGI 応援購入総額」を置き、その左に実行者・問合せ・掲載・グロース、右に応援購入・サイト内回遊・アクセス・サポーターを並べています。左はピンク、右は水色と側ごとに色が決まっていて、上部の引き出し線(実行者が抱えている問題を解決/サポーターのニーズを充足)から下部の掛け算の式まで、その色が最後まで通されています。図のどこを見ても、今どちら側の話かで迷いません。そして一番下、ピンクの枠には「月中アクティブプロジェクト件数 × 月次プロジェクト単価」、水色の枠には「応援購入UU数 × UU当たり月間応援購入金額」という具体的な式が置かれています。上の抽象的なブロック群が、最終的にどの数字に着地するのかが示されている構成です。
今回は「ビジネスモデル」の高品質なスライドを12つ紹介しました。中央ハブ型・左→右フロー型・循環/サイクル型・数式/因数分解型の4つのうち、自分の事業に合う型を1つ決めてから描き始めると、白紙の前で止まる時間が大きく減ります。
まだもう少し別のデザインを見たい!という方は、ビジネスモデルのスライドデザイン一覧もご覧ください。
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