記事更新日:2026年07月19日
記事公開日:2025年02月25日
市場規模のスライドは、「数字を大きく出せばいい」と思われがちですが、実際に優れた事例を並べてみると図解の型そのものが5つに分かれていることが見えてきます。この記事では、公開資料の中から市場規模のデザインが優れているスライドを11枚選び、その型ごとに整理して紹介します。
あなたが伝えたいのは「市場の包含関係」なのか「セグメントの構造」なのか「これからの伸び」なのか。それが決まれば、選ぶべき型も自然と決まります。
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今回集めたスライドを眺めていて気づいたのは、市場規模の見せ方が思ったより整理されているということです。伝えたい内容によって、選ばれる図解の型がはっきり分かれていました。
| 型 | 得意なこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 入れ子円型 | 市場の包含関係を直感的に見せる | TAM/SAM/SOMを一枚で説明したい |
| 面積・階段型 | 規模の比率を正確に伝える | 各層の差が大きく、円だと潰れてしまう |
| ピラミッド型 | セグメント構造の中で狙う層を示す | 市場の「どこ」を取るのかが主題 |
| 成長・変化型 | これからの伸びしろを見せる | 市場が新しく、規模より成長率が武器 |
| 大数字インパクト型 | 数字ひとつで掴む | 詳細は次ページに譲り、まず引き込みたい |
それぞれの型について、実際のスライドを見ながら学べるポイントを挙げていきます。
もっとも王道の型です。大きな図形の中に小さな図形を配置することで、TAM・SAM・SOMが「含む/含まれる」関係にあることを言葉なしで伝えられます。円が定番ですが、アーチなど別の形に置き換える手もあります。

引用元:https://speakerdeck.com/highlink_hr/zhu-shi-hui-she-high-link-hui-she-shao-jie-zi-liao
High Linkの市場規模スライドです。「香り市場 約6,500億」「隣接香り市場 約1,530億」「香水市場 約900億」と、わかりやすい市場名で表し、詳しくない人でもイメージできるような市場規模の表現をしています。
色は紫の濃淡3段階のみ。背景をわずかに温かみのあるオフホワイトにしているため、紫が浮つかず落ち着いて見えます。各層に「ボディケア」「ヘアケア」「ルームフレグランス」といった白いタグチップが添えられていて、その市場に何が含まれるのかが一目でわかるようになっています。

引用元:https://speakerdeck.com/simpleform/simpleformhui-she-shuo-ming-zi-liao
シンプルフォームの市場規模スライドです。入れ子構造なのですが、円ではなくアーチ(かまぼこ型)を4層重ねています。しかも塗りを一切使わず、細い線だけで描いています。グレー一色の背景に線画だけという、市場規模スライドとしてはかなり思い切った構成です。
数字が入っているのは最内層の「1,570億円(0.05%)」だけ。外側の層には金額が書かれていません。一見すると情報不足に見えますが、タイトルが「隠された拡大する市場」であることを踏まえると腑に落ちます。いちばん外のアーチだけ破線にしているのも周到で、確定していない広がりであることが線種だけで伝わります。最内層にハッチング(斜線)をかけて現在地を示す処理も効いていました。
左端に「DXの深度」という縦軸の目盛りが添えられているのもポイントです。市場規模の図に第2軸を持たせることで、「規模が大きい」だけでなく「深くなるほど広がる」という構造まで一枚で語っています。
円は美しいのですが、各層の差が大きいと内側の円が潰れてしまいます。四角形を階段状に重ねるこの型なら、比率を保ったまま全層の数字を大きく置けます。

引用元:https://speakerdeck.com/kubell_hr/kubell
kubellの市場規模スライドです。TAM49.1兆・SAM33.2兆・SOM2.0兆・コアターゲット3,453億を、オレンジの濃淡4段階で右下に向かって階段状に重ねています。数字が大きい層ほど淡く、狙う層ほど濃くなる設計で、色の濃さと「狙い」の強さが一致しています。
感心したのは左側です。「国内SaaS市場1.6兆」という比較対象を置いてから矢印で本題につないでいます。49.1兆円という数字は単体では実感が湧きませんが、誰もが知る市場と並べると「SaaS市場の30倍」という意味が生まれます。各層に付いた「DXによる効率化が可能な規模」「アウトソースで解決出来る余地」という黒枠のチップも、数字の意味を言語化していて親切です。

引用元:https://www.release.tdnet.info/inbs/140120260317583734.pdf
アライドアーキテクツの市場規模スライドです。同じ階段型ですが、層が4つあります。SOM・SAM・実現可能TAM・拡張TAMという独自の4層定義で、「今取れている範囲」と「理屈上の最大値」を分けて示しているのが特徴です。TAMをひとつの数字で出すと過大に見えることがありますが、実現可能/拡張と分ければ誠実な印象になります。
数字の入れ方も丁寧です。SOMには「29.9億円(2025年12月期実績)」と「50億円(2027年目標)」の両方が入り、さらに「SAM浸透率:2.0%」「TAM対比33%」「CAGR 8.7%」と、規模と自社の位置関係を示す指標が下辺に揃えられています。ピンクの濃淡だけで4層を区別し、罫線を使わずに面の切り替えで見せているため、情報量のわりに息苦しさがありません。
市場の大きさそのものより「どの層を狙うのか」が主題のときは、ピラミッドがおすすめです。上下の階層構造と、その中での自社のポジションを同時に示せる型です。

引用元:https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20250612588455/
スマレジの市場規模スライドです。大規模12万店舗・中規模89万店舗・小規模118万店舗という三層のうち、狙うメインターゲットの帯だけを青く塗り、残りはグレーに落としています。これだけで「どこを取りに行くのか」が言葉より速く伝わります。
さらに黄色い「UPDATE」バッジ付きの吹き出しで、ターゲット定義を「2〜39店舗」から「2〜99店舗」へ広げたことを取り消し線付きで明示しています。前回資料からの変更点を隠さずに見せる姿勢は、IR資料としてかなり好感が持てました。右側にはキャズム理論の普及曲線を並置し、「なぜ今この層なのか」の理由づけまで一枚に収めています。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20250630/140120250624597214.pdf
ブランディングテクノロジーの市場規模スライドです。大企業約1,300社・中堅企業約9,000社・中小零細企業約336万社を青のグラデーションで三層に。数字はピラミッドの中ではなく左側に点線でつないで外出ししており、図形の中に文字を詰め込まずに済んでいます。三角形の面積は法人数の実比率とは違いますが、構造を示す図と割り切っているぶん、かえって読みやすくなっています。
右半分の使い方が巧みです。「大手総合広告代理店は投資予算額が合わず参入しづらい」という一文の下に赤い✕印を置き、その下に自社の支援領域を薄い青の面で敷いています。競合が降りてこられない空白地帯として自社の市場を定義するという、市場規模スライドの一歩進んだ使い方です。
新しい市場では、規模そのものより「これからどれだけ伸びるか」のほうが武器になります。2時点の対比や推移グラフで、伸びしろを主役にする型です。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20260325/140120260325588223.pdf
情報戦略テクノロジーの市場規模スライドです。2024年度の5兆2,759億円を白い小さな円、2030年度の9兆2,666億円を黒い大きな円で表し、その間をグラデーションの尾でつないでいます。使っている色は白・グレー・黒だけ。それでも成長の勢いがしっかり伝わるのは、円のサイズ差と、細く始まって太く終わる尾の形が「拡大」そのものを描いているからです。
年度ラベルを斜めに配置しているのも効いています。水平に置くと静止した比較図になりますが、斜めにすることで奥から手前へ向かってくるような奥行きが生まれ、時間が流れている感じが出ます。

引用元:https://speakerdeck.com/halu_japan/zshi-dai-siyotodoramaqi-dian-noci-shi-dai-xing-purodakusiyon
HA-LUの市場規模スライドです。構造は情報戦略テクノロジーとまったく同じ「2時点の対比」なのに、受ける印象はかなり違います。2027年の約2.0兆円から2029年の約8.7兆円へ、光の帯が広がりながら惑星のような球体へつながっていきます。グリーンからブルー、パープルへと変化するグラデーションが、ショートドラマという新しい市場の空気に合っています。
同じ型でもトーンを変えるだけでこれだけ印象が変わる、という点でこの2枚は並べて見る価値があります。型は借りても、色と質感は自社の事業の温度に合わせるということですね。年号を斜体で小さく、金額を極太で大きくというメリハリも共通しています。

引用元:https://f.irbank.net/pdf/20260331/140120260331594489.pdf
GMO TECHホールディングスの市場規模スライドです。2019年の47億円から2028年の306億円まで、10年分の棒グラフを並べたオーソドックスな構成。ただし工夫が2つあります。ひとつは棒の上に右肩上がりの矢印を重ねていること。棒グラフだけでも傾向は読めますが、矢印を一本引くだけで、図が「読み取ってもらうもの」から「言い切るもの」に変わります。
もうひとつは、10個ある数値ラベルのうち最初の47と最後の306だけを黒の太字にしている点です。残りはグレーの通常ウェイト。これで「47から306へ」という6.5倍の物語が、グラフを読み込まなくても目に飛び込んできます。棒はGMOのブランドブルーのグラデーションで統一し、下部に調査主体・調査時期・調査機関まで開示しています。
詳細な内訳は次のページに譲り、この一枚では掴むことだけに集中する。そういう割り切った使い方をする型です。

引用元:https://speakerdeck.com/mediaaid2021/mediaaid-company-deck-20250305
MediaAidの市場規模スライドです。交差点を長時間露光で撮った光跡の写真に、「約13.2兆円」を白抜きで置いただけ。図解はありません。
注目したいのは、この会社が同じ資料の中に、この13.2兆円の内訳を入れ子円で示した別のスライドを持っていることです。8ページ目でインパクトを与えて引き込み、51ページ目で根拠を示す。同じ数字を役割で使い分けているわけです。大数字型は単体では「根拠がない」と見られがちですが、後段に詳細ページを用意しておけばその弱点は消えます。

引用元:https://speakerdeck.com/shizai/zhu-shi-hui-she-shizai-recruit-deck
shizaiの市場規模スライドです。「2025年国内EC市場 27兆8,000億円」という大数字が主役ですが、写真ではなく黒い背景の上に角丸の白いカードを浮かせる構成をとっています。カードの外周がわずかに発光しているように見え、写真を使わずに奥行きを出しているのが上手いところです。
左に数字、右に「市場拡大要因」3点という左右分割も効いています。大数字型の弱点である「で、なぜ伸びるの?」に、同じ画面で先回りして答えている形です。数字の横に添えられたギフトボックスのイラストは線画のみ・2色で、大数字の邪魔をしない抑制の効いた使い方でした。
今回は「市場規模」の高品質なスライドを11つ紹介しました。図解の型ごとに並べてみると、それぞれの型が得意なことがはっきり分かれているのが見えてきます。
迷ったら、まず「自分が伝えたいのは規模なのか、構造なのか、伸びなのか」を決めてください。それが決まれば、選ぶべき型は自然に絞られます。
まだもう少し別のデザインを見たい!と言う方は、市場規模のスライドデザイン一覧もみてくださいね。
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